アメリカの第7代大統領のジャクソンはアメリカ西部への発展および領土拡大の為、ネイティブ・アメリカンを強制移住させました。ネイティブ・アメリカンの中でも、チェロキー族は文明化を受け入れていたにも関わらず、冬に移住させられ1万2千人のうち4千人が命を落としてしまいます。いわゆる西漸運動が、神から与えられた使命であるとして正当化する主張を「明白な天命」と呼び、それを表した絵がこちらの絵です。
今回は、高校1年生 社会科 歴史総合の授業を見学しました。
教科書を読み、多くの生徒が疑問に感じていた、「何故ネイティブ・アメリカンは追い出されなければならなかったのか?」という大きな問いについて考えるという授業でした。
そのために、
・この絵(「明白な天命」)をみてどう思ったか。
・チェロキー族は、どこまで文明化していたのか。
・ジャクソン大統領はなぜネイティブ・アメリカンを強制移住させたのか?
といった小さな問いについて、資料に基づき考えていくという形で授業は展開しました。
「明白な天命」をみて、まずは各自で考え、
グループになってお互いの意見を交換します。
・左が暗く、右が明るい
・暗さは先住民へ負の感情を持っているから
・負の感情の持ち主は進出する側
・明るさは文明化、新しい時代を表す
・左へ動物が逃げている
などの解答がありました。
そこで現時点でのネイティブ・アメリカンが追い出された理由ついて考えると、
・言語の違いがあるのではないか
・発展を拒むのではないか
・土地が必要なのではないか
などの回答がありました。
生徒達は「発展(≒西洋文明)を拒むのではないか」と予想しましたが、ネイティブ・アメリカンの中でもチェロキー族は、発展をある程度受け入れていました。
それでは、チェロキー族はどの程度文明化(≒西洋化)していたのでしょうか?先生から選択肢が提示されます。
①農業を行う②キリスト教化
③学校教育④文字を持つ
⑤新聞を作る⑥憲法を作る
⑦議会を作る⑧大統領がいる
1つ1つ、実施していたと思うものに、生徒が挙手をしていきました。
正解は......
なんと全部でした!
そして、チェロキー族の作った文字や新聞、憲法などが紹介されました。
それでは、ジャクソン大統領はなぜチェロキー族を含むネイティブ・アメリカンを強制移住させたのでしょうか。
ここで、ネイティブ・アメリカンの強制移住に関するジャクソン大統領の考えと、強制移住をやめるよう求めたチェロキー族の嘆願に関する資料が配られました。そして、強制移住をさせた理由について考え、アメリカ大統領とジャクソン大統領の政策について整理したところで本時の授業は終了しました。
「なぜ起こったのか?」までしっかり理解せずに歴史の出来事を覚えてしまうと時系列や因果関係がわかりにくくなってしまいがちですが、「なぜ?」「どうして?」をしっかりと深く考えお互いの意見を聞くことで流れを掴み、「覚えた」ではなく「理解した」に繋がるのですね。また、市民となった人と追い出された人たちの間には、どんな違いがあったのか。それは歴史という枠組みを越えた、普遍的な問いであるようにも感じました。
考える力を育てるということが、勉強においても将来的にも大切であり、そのような時間を大切にしている、自分の考えを積極的に発表する生徒の姿を引き出してくれる、そんな素敵な授業でした。