海洋人間学

海での経験は、生徒たちを自立させひとまわり大きく成長させます。

本校では創立当時より、逗子の海を利用した教育を行っています。
現在では「海洋教育」を逗子開成の教育の大きな柱の1つとして重視し、単にクラブ活動などで一部の生徒が行うのではなく、全ての生徒が「ヨット帆走」「遠泳」などを体験するカリキュラムとなっています。

本校の海洋教育センターは、地下の艇庫から直接逗子湾に出ることができる距離にあり、自由に海岸を教育活動に活用することができます。また逗子の海岸は湾に囲まれた地形なので、遠浅で波の静かな海岸です。このような環境で海洋教育を行なうことができる恵まれた学校は、日本全国の中でも極めてまれであると言うことができます。
「ヨット帆走」「遠泳」などを実施するときは学年担当の教員・体育科の教員・海洋教育担当の教員が協力して実施します。常に救助艇や救命要員を配置し、安全に気を配りながら行事を行っているので安心です。海の上では全てのことを1人でこなさなければなりません。誰の援助もなく自分の力だけで大自然に向かうとき、生徒たちは自立することを学び、ひとまわり大きく成長することができます。また海は全世界につながっています。海での経験を通して、日本の中からの視点だけではなく違った視点で国際社会を意識し、世界へと自分の心を広げることもできます。

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3つのプログラム

遠泳
ヨット製作と帆走
海の恩恵で育む海洋教育
遠泳 本校に入学する生徒は全員が水泳を得意としているわけではありません。しかし中学3年生の時には逗子湾での約1500メートルの遠泳に挑戦し、参加した生徒は途中脱落することなく、毎年全員が泳ぎきっています。
製作と帆走 中1の10月から3月にかけて、ヨット製作と講義が行われます。生徒たちはグループを作って共同作業で製作を進めていきます。また、中学1年から3年生まで、毎年5~6月と9~10月の年2回ずつヨット帆走実習が行なわれます。
海の恩恵で育む海洋教育 海をとりまくさまざまな問題群を知り、海への知識を深めます。海洋教育特例校として、海についてさまざまな角度から学び考えています。2014年東京大学海洋アライアンス海洋教育促進研究センターと提携協定を結びました。
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実施状況報告

本校の「海洋人間学」は文部科学省より特別の教育課程として認められています。
その特別の教育課程「海洋人間学」の概要やねらいについてはこちらの資料をご覧ください。
特別の教育課程『海洋人間学』の編成について(PDF)

自己評価結果 学校関係者評価結果
2019年度 海洋人間学 2019年度 成果報告(PDF) 2019年度海洋教育アンケート結果(PDF)
2020年度 海洋人間学 2020年度 成果報告(PDF) 2020年度海洋教育アンケート結果(PDF)
2021年度 海洋人間学 2021年度 成果報告(PDF) 2021年度海洋教育アンケート結果(PDF)
2022年度 海洋人間学 2022年度 成果報告(PDF) 2022年度海洋教育アンケート結果(PDF)

遠泳

中学3年の7月に逗子湾で約1500メートルの遠泳が行われ、参加した生徒は途中脱落することもなく、毎年全員が泳ぎきっています。しかし本校に入学する生徒の中には、水泳が苦手な者、全く泳ぐ事ができない者もたくさんいます。全員が泳げるようになるために、中学1年の時から水泳の指導には時間をかけているのです。本校のプールは屋外プールではめずらしい温水プールです。そのためプールの授業を5月上旬から始め、10月中旬まで続けることができます。雨の日や気温の低い日でも、常に水温を27~8度に保つことができるので、十分な水泳指導を行うことができるのです。入学した中学1年の中にはきちんと泳ぐことができない、あるいは平泳ぎが全くできない者が大勢いるような状況であっても、体育科の教員の指導で生徒達の泳力はどんどんのびていきます。中学2年になると今度は海での遠泳を意識して、顔を水につけないヘッドアップでの平泳ぎの練習を始めます。生徒達はこの泳ぎ方で20~30分(約1000m)泳ぎ続けることができるようになります。こうして長時間泳ぎ続ける訓練の後に、いよいよ海での遠泳に挑戦します。これだけ準備していてもプールと海では感覚が全然違うので、本番に臨む生徒達の表情は不安に満ちています。しかし周りに救助艇やボートを配し、皆で隊列を作ってお互い励ましあいながら泳ぐので、力もわいてきます。泳ぎきった時は普段の生活ではなかなか味わうことのできない達成感を得ることができます。

ヨット製作と海洋講義

中学1年の10月から3月にかけて、ヨット製作と講義が行われます。生徒たちはグループを作って共同作業で製作を進めていきます。1つのクラスだけではなく、複数のクラスのメンバーが同じ船を交代で製作します。完成したヨットは中学2年の春の進水式にてシャンパンがかけられ、逗子湾に船出します。船体中央には担当した生徒の名前が書き記されており、生徒たちは自分の手で作った船が自由に逗子湾を進むのをうれしそうに眺めています。また製作作業と平行して、海洋に関する講義も行われます。この講義を通して、生徒たちはヨットに関する基礎知識を学んだり、現在世界の海が抱える環境問題などについて考える機会を持ちます。

海洋教育講義内容

  • ヨットはなぜ走るのか【帆走理論】自然科学の視点
  • ロープワーク【実技基礎】生活の智恵と技術
  • 艤装訓練【実技基礎】ヨットのしくみ
  • 海上での安全【安全確保】命・責任・協力
     
  • つながる海【海流・環境問題】
    海とのかかわり
  • ヨット製作まとめ【技術科との関連】
     

ヨット製作の工程

1 部品組み立て
パドル、淦くみ接着
トランサム接着
ミドシップフレーム接着
プラム船首接着
センタートランク接着
ラダーヘッド、センターボード接着
ティラー接着
2 部品仕上げ
ラダープレート、センターボード磨き
ネジ穴のバテ埋め
3 部品塗装
ニス塗り1回目
ニス磨き
センター、ラダーのニス塗り
4 船体組み立て
ストリンガー切断
キー/ストリンガー/ガンネル入り
外板張り
防舷材取り付け
ニー取り付け
5 船装品取り付け
UPバック取り付け
金具取り付け(アイプレート/スイベルなど)
6 船体仕上げ・塗装
ハルのパテ埋め
ハルのパテ磨き
船体の塗装
Name入れ

ヨット帆走

中学では、春と秋の時期に、3年間で4回ヨット帆走実習が行われ、生徒全員が海での貴重な体験を味わうことができます。「沖に出たら1人になります。すべて自力で行わなければなりません。でも浜では逆に、船を1人で運ぶことはできません。仲間の協力なしでは成しえない行事でもあるのです」などと、ヨット実習に対する心構えも教わります。中学1年の後期から、いよいよ実際の海で帆走実習を行います。天気の良い日・波や風の強い日など、自然の条件はその日その日で変わります。体育科、海洋教育担当の教員が救助艇で常に見守り、アドバイスを出すので、それを踏まえて自分の力で船を操作します。中学3年になると、みんな操作にも慣れてきてスピードを出せるようにもなります。そのためチームごとに決められたコースを走る、レース形式の実習も行われます。この頃になると生徒もすっかり自信を持ち、ヨット帆走を大いに楽しむことができます。

海の恩恵で育む海洋教育

本校は、教育課程特例校として、海についてさまざまな角度から学び考える授業を「海洋人間学」と称して編成し取り組んでいます。海は物理学、地学、生物学的なアプローチや、地理学、歴史学、社会学的なアプローチからとらえることができるので、教科の枠を超えた学びが可能です。これまで、本校は、東京大学海洋アライアンスや東京大学大学院教育学研究科附属海洋教育センターといった研究機関と連携し、よりよい教育プログラムをつくりあげてきました。東京大学の先生方には、プログラムづくりだけでなく、授業における生徒の海洋学習への取り組みも見ていただき、深い学びにつながるアドバイスをいただいてきました。また、東京大学やJAMSTECなど専門家の先生方には、海洋における最先端の研究成果を「海洋学特別講義」として、あるいは土曜講座「海洋人間学講座」として、本校の生徒にお話しくださっています。こうした講義をきっかけに、海洋の問題に関心をもった生徒たちが研究グループを結成し、自主的に研究しその成果を学会で発表し続けています。今後も、諸大学や研究機関と協力しながら、本校の海洋教育を充実、発展させていきたいと考えています。

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