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映画「黄金のアデーレ」鑑賞文ご紹介

2016/09/15

映画「黄金のアデーレ」鑑賞文


7月7日に高2・高3の生徒が鑑賞しました。82歳の老婆マリアが駆け出し弁護士ランディと共にオーストリア政府を相手に裁判を起こします。それは戦時下にナチスに略奪された、マリアの叔母をモデルに画家クリムトが描いた名画"黄金のアデーレ"の返還要求でした。奪われた名画が辿った数奇な運命を描いた、実話を基にした感動のドラマです。

【注意】鑑賞文は時に映画の重要な内容や結末に触れる場合がありますので、お気を付け下さい。
 

黄金のアデーレ1.jpg

高3 A君

 冒頭の二人が出会うシーンでマリアが言った言葉が印象的だった。
「過去を忘れさせたくないの。みんなすぐに忘れるから。若い人は特に。」
 この言葉にマリアが絵を取り戻す理由が詰まっていると思った。マリアにとって、姉やアデ―レ、両親たちとオーストリアで暮らした過去は、懐かしく、美しい思い出であったとともに、ナチスの台頭によるアメリカへの亡命のために打ち切られ、両親と別れざるをえなかった悲しい記憶でもあった。しかし、マリアは思い出したくない過去に踏み込むことを決意し、絵の返還を求めた。彼女にとって絵を取り戻すことは、絵を元の所有者に戻すことではなく、彼女がオーストリアで両親や叔母たちと過ごした美しい記憶を甦らせるということだったと思う。
 マリアに協力したランディも、過去を見つめ直し、記憶を甦らせることを動機として行動を起こし始めたのだと思う。オーストリアで彼は、ナチスに迫害されて殺害された人々に思いをはせ、絵の返還へ向けて全力を尽くすことを決意した。彼が調停の場で語った言葉も、マリアの冒頭の言葉に通じるものがあった。彼は調停の場で、不当に回収された絵の返還を求めるとともに、ナチスに加担し、ユダヤ人の迫害に手を貸してしまった過去を見つめ直し、過去の罪を認め、償いをすることを選択するよう語った。「過去を忘れさせず、記憶を甦らせる」という信念が印象に残る映画だった。

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