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高校生対象海洋人間学講座「ヨットのテクノロジー」

2016/03/26

   高校生対象の海洋人間学講座『ヨットのテクノロジー』が、本校海洋教育センターにおいて、実施されました。講師は、東京大学大学院新領域創成科学研究科の早稲田卓爾先生です。ヨット部の生徒を含む、高1・2生徒16名が参加しました。

20160325ヨット①.jpg

 まずは、スライドや映像をもとに講義形式の授業が展開されました。グローバル海事社会における課題に、高騰する燃料費削減と二酸化炭素排出削減による地球温暖化防止の二つがあることを学びました。あわせて、削減するための代表的な技術を紹介していただきました。
 そして、話は大航海時代へ。伝統的帆船は二酸化炭素排出量ゼロであることを確認します。この事実や技術を確認するなかで、現在、民間での実用化に取り組むウィンドチャレンジャー計画に関する映像を見せていただきました。この計画では最短航路ではなく、風の向きによって効率の良い航路を目指すそうです。早稲田先生は、貿易風などの風の動きや正確な天気予報をもとに、将来的には風だけを利用した航海も可能になるかもしれない、と話を続けられました。その航海のあり方は、港の位置も変えるかもしれない、物流そのものに大きな変更を与えるかもしれない、と話は広がります。一つの研究や技術が、社会全体に広がっていくさまを考えさせていただきました。
 そして、ヨットの科学についても学びました。「定常流れ」「揚力と抗力」「揚力係数と仰角」「ダランベールのパラドックス」「理想流体」など。身近なヨット帆走の事例などを使って分かりやすく説明していただきました。
 興味深い講義の後は、実際に身体をつかった体験実習です。二人一組で「ヨットの模型を作ろう」という課題をだしていただきました。三輪の台車、木棒40㎝1本に加えて、A3程度の厚紙1枚と道具類が渡されます。その紙をどのように使っても良いので帆を完成させ、陸上で走るヨット模型を作ろう、というのです。

20160325ヨット②台車.jpg 20160325ヨット③制作風景.jpg

20160325④サキュレーター.jpg 20160325ヨット⑤制作ふうけい .jpg

20160325⑥ヨット試行錯誤.jpg 20160325ヨット⑦ しこうさくご.jpg


 目を輝かせて取り組む生徒たちの姿が印象的でした。
「この角度だと難しいから少しずらしてみよう」「いやいや足りない」「もう一回調整だ」
「思い切って、ここの部分切ってみようか」「重心下げた方がいいかな?」

「帆の先にテープをつけてゆがみを何とかしてみよう」

「風をうける角度がない。車軸をずらそう」
何度も何度も試行錯誤。微調整をくり返していました。

 その後に、レースが開始されます。風の角度を二回変えて、合計タイムを競いました。笑いが起こる時もあれば、悲鳴が起こる時も。とても楽しい時間でした。教員チームを含む各チームが、微調整を何度もくり返し、確認している姿は、学びの理想型を見ているようでした。

20160325⑨1位.jpg

第一位チーム

20160325⑩2位.jpg

第二位チーム 海洋教員チーム!?

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第三位チーム


 理論を学び、自分自身の手足や感覚を総動員して制作する今回の授業。参加者にとっては得難い学びの時間になりました。早稲田先生はじめご関係の先生方本当にありがとうございました。以下に感想文の一部を紹介します。

「今回の講座を通じてヨットという乗り物を異なる視点から見ることができた。二酸化炭素の排出量において船舶が大きな割合を占めていることを知り、その削減のために貨物船にセールを使うという斬新な発想には驚いた。一見原始的に見える様な帆船でも、現代の技術を用いることによって、地球温暖化を解決することができる可能性があることが分かった。また日ごろあまり意識せずに、セールを使っていたが、流体力学的に見たセールの表面の空気の流れが良く分かった。またランドヨットでは、実際のヨットのセールを考えてやってみたが、うまく走らず、実際に試行錯誤を行って良く走るセールを作ることができた。そして風の角度が異なるだけで、紙のセールは走らなくなり、普段使っているセールがいかに良くできているかが分かった。」

「講義では、自分の知っているスポーツとしてのヨットではなく、貿易の場等で利用される実用的なヨットという、ヨットの新たな一面を知ることができた。ランドヨットを使った実習は、想像以上に難しかったが、模型を利用したことでヨットが走る原理を体感できて良かった。セールの形を少し変えただけでスピードが大きく変化したので、セールの形の大切さやヨットがいかに精密なシステムでできているかを感じられた。また、他の組を見て全く違うアイデアにふれることもできた。もっと時間をかけて多くのことを試したいと思った。」

以上

カテゴリー :
海洋人間学

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