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映画『麦子さんと』鑑賞文ご紹介

2014/09/19

中学1・2年生が鑑賞した映画『麦子さんと』の鑑賞文をご紹介します。

【注意】鑑賞文は時に映画の重要な内容や結末に触れる場合がありますので、お気を付け下さい。

中1 T君

 のんびりした映画だなあ。「麦子さんと」を見終わった後に思ったことだ。派手な銃撃戦も爆発もない。映像ものどかな田舎の風景ばかりだ。主人公の住んでいる場所は東京だが、美しい夜景も超高層ビル群も少ししか出てこない。また、ストーリーも淡々としている。感動作であるが、泣けるような場面はそんなに多くはない。つまり非常にあっさりとした映画なのだ。
 しかし、よくよく考えてみるとハッとするようなことがある。それは、麦子さんが始まりと終わりで大きく成長しているところだ。変化ではなく、成長したのだ。周囲の環境によって、主人公達が変化しても、主人公達が人間的に成長しなければ何の意味もない映画になってしまう。
 では、麦子さんはどこが成長したのか。まず冒頭、駅員に「どこかで見たことがあるなあ。」と声をかけられる。この時、麦子さんは無愛想に返事をするだけである。しかしラスト近く、もう一度同じ言葉をかけられると、今度は微笑んで返すのである。ここでは麦子さんに相手の気持ちを考えるという成長が生まれているということを表している。
 また、自分の兄が母親と和解できず、母の葬式で孤独に涙を流しているところを麦子さんは見てしまう。だからこそ、母の故郷へ戻った際に、宿の女将に暴力を振るい、金をせしめる女将の息子に強烈なビンタをかますのだ。兄のように悲しい思いをしてほしくないという、思いやりの精神が麦子さんに生まれたのだ。これも大きな成長である。
 このようにこの映画の根底には深いテーマが流れているのだ。それらを穏やかな画面の中で表した本作は紛れもない傑作だと思う。

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