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校史余滴 第28回「宇高兵作小伝⑤」
*「宇高兵作小伝①・②・③・④」未読の方は、以下をお読みください。
「小伝①」https://note.com/zk_koushi/n/nbbb881fc9aac
「小伝②」https://note.com/zk_koushi/n/n5265d36b5372
「小伝③」https://note.com/zk_koushi/n/nf35e36269496
「小伝④」https://note.com/zk_koushi/n/n24f29c98d971
*図版番号は、「宇高兵作小伝①~⑤」通し番号となっております。
*「宇高兵作小伝」引用・転載の際は、以下のように明記してください。
「三好彰「宇高兵作小伝」(「note 逗子開成 校史余滴アーカイブ」」)
三好彰さんの「宇高兵作小伝」の最終回を発信いたします。「小伝⑤」では、「宇高一族と逗子開成の関係」・「宇高兵作の終焉」に加えて、ご家族についてまとめられています。逗子開成に通った「太郎」、鎌倉女学校に通った「濱子」と「秀子」。兵作死後の「宇高家」について述べられています。
「結びに代えて」において、「秀子」が、「鎌倉女学院の恩師・野尻清彦(大佛次郎)を偲んで」のこしたという短歌の一つ一つは、「宇高家」のその後を考える上で、きわめて貴重なものです。その一句一句を、一文字一文字を読むと、「宇高家」のその後を想像し、胸を揺さぶられる思いを得ます。
最後になりますが、「小伝⑤」に関連して、校史編纂委員会として、三好さんからご教示いただいた宇高兵作関連史料について紹介しておきたいと思います。
葉山の森戸神社には、宇高兵作葬儀の関連資料が所蔵されています。すでに神奈川県立公文書館によって、「守屋大光所蔵文書」として資料整理が行われ、目録が作成されています。その中に以下の四通があります。公文書館の封筒記載の資料名にならって紹介しておきます。
・46号文書「誄詞」(元逗子開成中学校講師宇高兵作大人の命)
大正12年10月14日
・47号文書「祝詞」(元逗子開成中学講師宇高兵作大人の葬祭)
大正12年11月1日
・48号文書「祝詞」(宇高兵作葬)
大正12年11月4日
・51号文書「宇高兵作氏一年祭」
大正13年10月30日神奈川県立公文書館作成封筒表 記載内容より
この四通をひもとくことで、森戸神社における、大正12・13年の死者供養「神葬祭」とそれに続く「霊祭」のあり方について明らかにすることができます。すなわち、「宇高兵作」という死者の魂が、一年かけて神になるまでを追うことができるのです。
【資料①】の日付については検討が必要ですが、【資料①】~【資料③】は、一連の神葬祭の中でよまれた誄詞と祝詞にあたります。そして、【資料④】は、その一年後の祝詞で、霊魂が神として定着したことを確認することができます。
ここでは、その詳細説明を省きますが、例えば、【資料①】の誄詞(るいし)には、次のような一節があります。(*「誄詞」とは、「死者をしのび、その生前の功績をたたえて哀悼の意を表わすことば。」(『日本国語大辞典』))
「愛志伎妻手母置伎。浦若支子等手母棄弖。今年十月三十日乃黄昏尓。齢四十余利九歳乎。此世乃限止爲弖。入月乃見立當如久。逝久水乃行弖返良奴如久。」
愛しき妻とうら若い子等を置いて亡くなってしまった無念の思いが読み込まれています。そして、10月30日の黄昏に49歳で亡くなり、「入る月の見立たぬ如く、逝く水の行きて返らぬ如く」と記されています。夜空を照らしていた月が、山に沈んで隠れてしまったように、行ってしまった水が二度と戻らないようにと、受けいれがたい現実を表現しているのです。
一年後の『祝詞』は、「神葬祭」と同じように逗子開成中学校の関係者(教職員と生徒)や親族が集まり、故人の霊にささげられたことが分かります。そこには、「守護神止成給比。親族睦比魂含比弖。」とあり、「守護神」となって、「親族」(血のつながった親戚や一族)の「睦び魂を含びて」と互いの心や魂を大切に含み(育み)、見守ってほしいとの思いがこめられています。そして、「開成中學校乃職員生徒乃中。睦足含比眞乃親子乃如久。」という一節もあり、学校職員生徒との結びつきを親子のように「含む」(育む)ことも示されています。
逗子の地の学校に奉職し、亡くなった宇高兵作は、森戸神社という地域の神社で偲ばれました。そして、宮司守屋喜代太郎を斎主として、関係者が集まり、一年を通じて御霊と向き合ったことをうかがうことができます。地域社会における、大正時代の神葬祭の様子を明らかにするとともに、学校・教職員・生徒との結びつきを考えることができます。
三好さんが「小伝①」においてご紹介いただいている通り、宇高家の菩提寺・實法寺は曹洞宗でした。そのあたりとの兼ね合いなど検討すべき事柄はまだいくつかあり、一連の資料については、改めた検討が必要ですが、「宇高兵作の終焉」が、別の資料からも明らかにできることを紹介いたしました。
「宇高兵作小伝⑤」をお読みいただき、宇高兵作の最期に立ち合い、さらには、残されたご家族とその後の人生に寄り添っていただければ幸いです。
「宇高兵作小伝⑤」https://note.com/zk_koushi/n/n8ca8ed481100