生徒の活躍
第6回田辺杯~スピーチコンテスト with 鎌倉女学院~
創立者を同じくする逗子開成と鎌倉女学院の学校交流の一環として行われているスピーチコンテスト「田辺杯」、第6回を迎えた今年のテーマは「文学の可能性」です。両校とも全校生徒が参加する予選会を勝ち抜いた17名の若き弁論家が徳間記念ホールに集いました。この記事ではその17名のスピーチの様子をお届けします。
今年度は逗子開成での開催。会場は徳間記念ホールです。
司会の井上裕貴君、大雲空君。どちらも立候補でこの大役を買って出ました。
学校長より開会のスピーチ。いよいよ開幕です。
1番 山口優一君 これからの文学
AIが文章を書く時代。文学もまた一人の人間では到達できない領域へ進化するのか。それとも人間が書いていないものは評価しないのか。ぼくはそこに、想像力への脅威ではなく、新たな進化、未来への無限の可能性を感じる。
2番 園田陽梨さん 歌詞と文学
文学とは何か。その定義は固定できない。時代の中で文学の境界線は変化し、ボブディランの歌詞が、米津玄師の歌詞が、心に届く文学となる。
3番 古川悠太君 つまらなさの美学
本は自分を映し出す鏡。手に取った英単語集に英単語を求める自分が映し出されている。文学がつまらないと感じたなら、それは自分がまだ映らない鏡を手に入れた証拠。つまらないの先にいる鏡に映らなかった本当の自分がいる。手を止めないでページをめくれば、きっと何かがみえてくる。
4番 根井望心さん 教材化される児童文学
『くじらぐも』に託された平和への祈り。『ごんぎつね』に隠された家庭愛への渇望。そんな風に思いいたらなくてもそれでいい。知らずしらずのうちに、文学のおかげで私たちは、作者の考える理想を、時代を超えて共有できているのだから。
5番 宇高太陽君「文学だから」できることとは
映像は見るもの、マンガは読むもの、文学は浸れるもの。映像も絵もない文字だけの世界で、心の中で描き、浸る。得られるものは豊かな心と想像力。他人の気持ちをおもんぱかれる人に。人生を楽しめる人に。
6番 尾鼻美海さん 新しく伝わる
口承文学。文字のない時代、物語はすべて口承だった。時代が変わりインターネット全盛の今、新たな口承文学が生まれつつある。リアルタイムできいているような没入感。伝わる力。
7番 高橋光君 本当の自分と向き合うには
SNS時代。言葉足らずで仲間を失う。他人の評価を欲しがりみせかけの自分を作り出す。不安。疲れ。そんなときこそ文学作品に没入したい。豊かな感情表現にふれることで、気持ちを整理できる。自分の境遇にかさねることができる。傷ついているときこそ。
8番 田中成美さん 文学を音楽的に楽しむ
音楽が隆盛を極める中、文学が廃れてきていると感じる。自身にない価値観が得られる文学に廃れて欲しくない。古くは万葉文化の時代から、文学は音楽と共通点を持つ。音に対する感受性を大切に、文学を楽しんでいきたい
9番 矢吹弘登君 短くて面白い
文学のひとつにショートショートというものがある。星伸一が有名。短い分、想像力をかきたてられる。考察をしたくなる。意外性のあるものが多く感情が揺さぶられる。文学に対する価値観を見直すきっかけになる。
10番 今村ひなたさん 言語の可能性を広げる文学
「私の考える文学の可能性とは、言語の可能性、自分を変えられる可能性。」と力強く主張しました。ハキハキとしたやわらかい声が印象的でした。
11 栃木悠太君 科学と文学
文学の世界にはじめて、人間以外が現れた。AIである。AIは感情を持てない、AIが書いたものには価値がない、などと決めつけずに、AIの将来性に文学の可能性を感じたい。
12 森山悠愛さん 差別ではなく区別する
名前をつけることで、ないことにされていたものが可視化される。そうすることにより人々の興味や注目が集まる。言葉にはそういう力がある。
13 齊藤雅流君 データ分析に基づく言語表現の考察
「伊豆の踊り子」「マクベス」「夜間飛行」といった文学作品を、風景に関する描写の割合をグラフ化するなどして分析しながら論じる姿が新鮮でした。読者それぞれの読み方で直観的に美しさを味わうことの大切さにも触れました。
14 松本留奈さん 言葉で紡ぐ口承文学
文字を持つ言語が約400である一方で、文字を持たない言語は6000種類を超える。文学とは文字と直結するものではなく、口承文学もまた意義深い文学である。いまやそれが録画や録音でのこせる時代に。口承文学はさらに豊かに。
15 川合倫太郎君 「形」を変えて愛される文学
内容のみならず、声量、声質、動き、目線、すべてにこだわった力強いスピーチでした。日本文化の本質を「共存すること」に見出しながら、読書の魅力について論じました。
16 山中綾さん 歌でQOLを上げる
歌によって感情を動かされた数々のエピソードを用いながら、歌を、詞を、大切にすることで、豊かな人生につながる、と論じました。
17 林正朗君 感情を生み出す力
穏やかな語り口で、文学の持つ力について論じました。文学は人の行動を変える力にも、国を滅ぼす力にもなりえる、なんでもうみだせる無限の可能性が文学にはある、そのように語る優しく力強い声が徳間ホールに響き渡りました。
最優秀賞は逗子開成の古川悠太君、優秀賞は鎌倉女学院の園田陽梨さん、逗子開成の林正朗君が受賞しました。
今年も素晴らしい田辺杯でした。来年も楽しみにしています!