学校生活
サントリー美術館「英一蝶展」見学
すでに展覧会は終了してしまっていますが、サントリー美術館「英一蝶 風流才子、浮き世を写す」展を訪問した土曜講座「そうだ!博物館へ行こう!!」第二回についての報告です。
11月2日(土)六本木のサントリー美術館に、中1~高2までの講座登録者27名が集まりました。10時に集合し、15時過ぎ解散の講座です。集合早々、事前課題を回収します。事前課題では、「江戸絵画について知っていることを書こう」と「英一蝶展の説明文を読み、興味を持った箇所についてまとめよう」という二つに取り組んでおいてもらいました。江戸絵画というと「浮世絵」を思い浮かべる生徒が多かったようです。そして、英一蝶については、「島流し期」の作品に興味関心をいだいてくれた生徒が多かったようです。たかだがB5一枚のプリント課題ですが、短文ながらも素直なコメントが多く、参加者に好感がもてるコメントが多かったです。事前課題を確認ののち、さっそく館内へ。
サントリー美術館の展覧会では、いつも展示解説をうかがってからスタートするのが通例ですが、今回は別バージョン。当日は、ファミリートークの日のため、館内で自由に対話ができるまたとないイベントの日でした。そして、要所要所にいらっしゃるスタッフの方々が、英一蝶のさまざまな絵画をもとに、対話の世界へいざなってくださいます。そのため、まずは自由見学の時間としました。
『雨宿り図屏風』の前でファミリートークに交じっている生徒がいました。「どんな人がいるのでしょう?」「何をしているのでしょう?」などなど来場者の様子を確認しながら、声をかけていただいておりました。静かに、じっくり作品を観賞することも楽しいのですが、しゃべりながら鑑賞する美術館も楽しいものです。生徒たちにも好評でした。
また、6階の小さなお子様向けの体験コーナーにも、中学生男子たちは顔をだしておりました。そして、意外に楽しんでくれていました。どうやったら「布晒舞図」を再現できるのかコーナーでは、苦労しながら「布」を放り上げたり、引っ張ってみたり、と愉しんでいるようでした。また、工作系のコーナーでもチビッ子たちに紛れて熱心に取り組む生徒たちが。美術館の担当スタッフの方々にもお褒めの言葉をいただいておりました。
なお、そういった体験の合間で、展示室では、興味を持った作品3つについてコメントを書いてもらいます。そして、絵画中の人物に関するラフスケッチ+その描いた対象に吹き出しをつけてもらいました。これらの課題は、作品の細部をみてもらうために課しているものです。熱心に作品をみてくれていました。一番人気は・・・邪気を払う「鐘馗図」でした!
「人物」ではないのですが、そこはご愛敬。かっこいい図柄として選んでいる生徒が多かったようです。関東の住宅では、住宅の屋根などに鎮座する鐘馗像をみることはありませんが、関西圏では、京都の住宅などでも見ることができます。旅行時などに覚えていてもらえるといいなあ、と思いながら取り組みを見守りました。
その後、お昼休憩をはさみ、午後の活動スタートです。ここで、スライドをつかってフレンドリートーク。教育普及担当のスタッフの方よりサントリー美術館そのものの説明や英一蝶について、また今回の展示の目玉などについてご紹介いただきました。そして、今度はグループ活動です。
今回のお題は、「英一蝶が描いた人物たち(神仏含む)を数えてみよう」三人一組の作業で行い、各班に単眼鏡を提供しました。そして、事前に準備したワークシートに「男性」「女性」「子ども」「動物」「神仏」「その他」の数を記入してもらいます。一人が確認したら、残りの二人は、その数に誤りがないか確認します。お借りしたお部屋と展示室を行き来しながら取り組んでもらいました。
初対面の参加者も多いのですが、この課題に取り組むと自然と対話が生まれます。そしてどんな図様が「男性」なのか「女性」なのか。「大人」と「子ども」の境界はどこにあるのかなど、数をあわせるために各場所で議論が生まれていました。
事後の振り返りでも、このグループワークについて、
「同じ作品を見ても、数えた数字はかなり異なっていたので、個人によって見方は様々であるのだなと感じた」
「その絵に描かれた人や動物の数が合わないことから、人が絵から感じることのバラバラさを感じた」などと、多くの生徒が絵画の見方のズレや価値観のズレそのものについて、そして、そのズレをすりあわせることの難しさを書いてくれていました。そして、時間はあっという間に終了時間へ。何とかグループでその「数」をまとめてもらいました。
11月2日(土)に、サントリー美術館にいた絵画中の人物・動物・神仏たちは、
男性=386
女性=83
子ども=82
動物=73
神仏=78
その他=25
との結果でした。
当然ながら、分担して実施しており、さらには絵画の見方を全員ですり合わせているわけではありませんので、数に相当なズレはありそうですが、何が描かれているのかじっくり見る、何が描かれているのか考える、といった視点で鑑賞することができたのは間違いありません。そして、「なぜ男性の方が多いのか」「子どもと大人の違いとは何か」などといった当時の社会を考える上で、基本的な疑問を得たことと思います。
終了後の振り返りでは、「参加して良かった点」や「学んで良かった点」について、
「風俗画という新しいジャンルの絵に出会うことができた。これからも多くの美術館に行きたい」
「絵に面白さを感じることができるようになった」
「美術館の絵は少し堅苦しいイメージがあったが、英一蝶のユーモアや皮肉のある絵をみて少しクスっとできた」
といったコメントなどを書き残してくれました。
事前の打ち合わせ含め、ファミリートーク中に対話型鑑賞に生徒たちを誘ってくださったスタッフの方々、一日を通してお世話になったサントリー美術館の皆様にこの場を借りて御礼申し上げます。そして、来年もまたよろしくお願いいたします。