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土曜講座「そうだ!博物館へ行こう!!」サントリー美術館

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土曜講座「そうだ!博物館へ行こう!!」サントリー美術館

土曜講座「そうだ!博物館へ行こう!!」サントリー美術館

去る9月16日(土)土曜講座「そうだ!博物館へ行こう!!」第一回 サントリー美術館が実施されました。有志中学生16人が、10時集合、14時30分解散で参加しました。

現地集合、現地解散のこの講座、時間通りに無事集合し授業をスタートすることができました。まずは、フレンドリートークで、サントリー美術館の成り立ちや今回の特別展「虫めづる日本の人々」の見所をご紹介いただきました。事前課題において、「虫との関わり」や「歴史や文学作品における「虫」」について知っていることを記入してもらっておきましたので、スムーズに「虫」の世界に入ることができたと思います。中学生向けに、とても分かりやすくお話していただきました。うかがったお話は、後に行う個人で取り組む課題や班で取り組む課題の筆記内容にしっかり反映されており、教育効果の高さを感じました。必死にメモをとっていた子どもたちの姿も印象的でした。

次に、個人で鑑賞する時間です。今回は、二つの課題に取り組んでもらいました。Q1)では、イチオシ作品について、小学生を対象にした推薦文を記すこと。ただし、歴史的な用語、歴史上の人物、歴史的な考え方のいずれかに言及することを条件にしてみました。Q2)では、気になる虫が登場する作品を一点選び、その作品を簡単にスケッチし、その上で、マンガの吹き出しを挿入し、その虫が人間の視点でコメントしているつもりで、どのようなことをしゃべっているのか言語化してもらう課題です。ともに作品の細部を見てもらいたいとの思いで作成した課題です。子どもたちの作品の紹介は割愛しますが、熱心に取り組んでくれました。とくに虫のコメントは機転の利いた作品が多く面白い作品ばかりでした。

 

そして、お昼休み+自由鑑賞の時間とし、午後から班課題に取り組みました。初対面の人も多かったので、「自己紹介と昼ご飯何食べた?」からスタートし、共通課題の内容について説明しました。

 

「美術館の中にいる虫を数えよう」という壮大な課題にチャレンジしてもらいました。すでに今回の特別展は会期を終えてしまっておりますが、このような企画に取り組んだのは、逗子開成生徒が唯一だと思います。二人一組となり、ミスがないようにシートに記入し、ダブルチェックし、最後に虫の種類と数の報告という形をとりました。展示室と作業場所を行き来しながらの時間となりました。生徒のやり取りを少し紹介すると・・・。

 

「作品中の点々が虫なのか何なのか分からないので、単眼鏡かしてください。虫でしょうか、それとも違うものなのでしょうか?」

「擬人化した虫は数えるっていってたけど、どれのこと?」

「着物のデザインの裏側はどうするんだ?」

「若冲の絵のおたまじゃくしの数が?です。150だ!という子と130だ!という子と・・・」

「これは、蝶々なのか蛾なのか」

「10,11、12うわ~」

あくまで目に見える部分を数えただけで、展示で見えない部分は数えることができておりません。しかしながら、生徒の取り組みで、9月16日(土)、サントリー美術館内にいた虫の数の合計を確定できました。その数は「1207匹!!」でした。

 

大変な取り組みでしたが、とても楽しめました。班課題の目的はとにかく絵画の細部を徹底的に見ることの大切さや面白さを伝えたいために考えましたが、概ねその趣旨を子どもたちの側は感じ取ってくれたように思います。全体を振り返った参加者の感想(原文ママ)を以下にご紹介します。(授業担当者としてうれしいコメントばかりでした♪)

 

 

「虫といえば忌避されがちな存在だが、時に絵画や娯楽として人々に愛されていたことが分かり参加して良かったと思う。」

「小学生向けの推薦文を書くということで、分かりやすく書くために作品をよく見る必要があると感じた。鑑賞文を作るときはだれかに分かりやすくするために作品をよく見る、ということが大事だと思った。」

「作品内に既に何の虫がいるのか調べている人がいることを資料から知り、研究者や学芸員のすごさを知ることができた。」

「人と虫の絵を見て昔の人たちの虫に対する感覚や考え方がわかって良かった。」

「普段とは違う方向から美術館を見ることができた。一人ではすることのできない「虫の総数」を数えるということができて良かった。」

「他の物と草虫図をくらべると、他の物は蝶ばかりだったのに対し、草虫図は蝶も多かったが、トカゲやかたつむりもいて愛を感じた。」

「普段見ることのできない(見ようと思わない)物が見れるキッカケになって良かった。」

「草虫図は虫の単体の数というより種類が多いと感じました。そしてクツクムシという存在を知りました。」

「画家によって、虫への描き方は違っていて、でも必ず愛・親しみがあり、その思いを感じることができてよかった。虫を描かず音色や虫を自分で想像できる絵は気に入った。」

「なかなか見る機会が少ない虫の文化作品を昔の文化などを通してみることができて、きちょうな機会だった。」

「昔の人が虫とどのように接していたかや昔の人が意外と虫の体のつくりや生態系に詳しかったのが分かったのが良かった。」

「虫の数~(略)実際にかぞえてみるとかぞえ忘れがあったりペアの人と意見がくいちがうことがあったので難しかった。」

「蝶の模様があしらわれた着物の蝶の数を数えるのには苦戦した。けれど数を数えるのは楽しかったのでよかった。」

「そもそも僕は虫が嫌いで、それを克服するための第一歩として作品の中の虫、つまり絶対に動かない虫を見てみようとこの講座に申し込んでいた。その目的を達成できたうえ、昔の人々の虫を見る目をのぞくことができ、はじめの一歩として良いスタートだった。」

「今までは机の上でまなぶ「虫」だったが、土曜講座を通じて体で感じる「虫」ということができた。」

「今と比べ、虫への恐怖心を持たずに(特に女性)積極的に生活に取り入れる態度が強かったことに驚いた。」

「探す、数えるだけで目が悲鳴を上げていたが、同時に日本文化に虫がしみついていることを感じた。」

「ペアは初対面の人だったけど、共通課題をすすめる内に仲も深められました。虫の数を数えていたら思ったよりたくさんいるなと感じました。」

「虫の歴史や絵は学習の中であまり関わってこなかったので関心がうすかったですが、今回の学習を通して、平安や江戸時代から虫が関わっていたことをしって、虫にさらに興味がわきました。楽しかったです。」

 

 

研究の一端に触れる、学芸員の偉大さを知る、草虫図の意味を考える、虫を楽しむ文化に接する、他者と数える行為を楽しむ、といった点を感じ取ってくれている感想に接すると、実施して良かったと思います。また、数え方によって若干のズレは生じるかもしれませんが、「1207匹」を参加者全員で共有できたことも、ちょっとした達成感を感じる機会にもなったと思います。他館に行った時にも活きる「鑑賞する視点」を身につけることができていたら、と思います。

 

なお、最後になりますが、事前打ち合わせや当日の対応等、教育普及担当の方々を中心に、サントリー美術館の皆様には大変お世話になりました。この場を借りて御礼申し上げます。授業実践を行うにあたり、さまざまにご配慮いただき、本当にありがとうございました。

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