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【シネマ倶楽部】『荒野に希望の灯をともす』鑑賞文

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【シネマ倶楽部】『荒野に希望の灯をともす』鑑賞文

【シネマ倶楽部】『荒野に希望の灯をともす』鑑賞文

7月4日に高校2,3年生が『荒野に希望の灯をともす』を鑑賞しました。

(作品概要)

アフガニスタンとパキスタンで35年に渡り、病や貧困に苦しむ人々に寄り添い続けた、医師・中村哲。誠実な人柄が信頼され、医療支援が順調に進んでいた2000年、大干ばつに直面し、中村の運命は大きく変わる。渇きと飢えで人々は命を落とし、農業は壊滅。医療で人々を支えるのは限界だと決断した中村は、用水路の建設を決断する。大河クナールから水を引き、乾いた大地をよみがえらせるというのだ。医師にそんな大工事などできるのか? 数々の技術トラブル、アフガン空爆、息子の死……。専門家がいないまま始まった前代未聞の大工事は、苦難の連続だった――
戦火のアフガニスタンで21年間継続的に記録した映像から、これまでテレビで伝えてきた内容に未公開映像と現地最新映像を加え劇場版としてリメイク。日本では中村の生き方が中学や高校の教科書で取り上げられ、評伝などの出版も続いている。なぜ医者が井戸を掘り、用水路を建設したのか? 中村は何を考え、何を目指したのか? 混沌とする時代の中で、より輝きを増す中村哲の生き方を追ったドキュメンタリー。これは「生きるための」戦いだ。

※生徒の鑑賞文には映画の内容も含まれますのでご注意ください。

(高3E Tくん)

医師・中村哲がインタビュー中に何度も口にした「平和」という二文字。日本に住んでいては幾度となく聞いた単語である。しかし、私が思うに多くの人々が口にする平和とは安全のことではなかろうか。だが、彼が口にした平和とは往々にして人々が維持する安全ではない。中村哲は平和を乱されたアメリカがその報復と称して行った武力攻撃の下で用水路建設を続けた。世界は平和を取り戻そうとするアメリカをどのような目で見ていたのかは分からない。しかし彼は断じて言った。平和とは誰かの良し悪しを正すものでもなく、悪を成敗した結果でもなく、人々が「生きて」暮らすことだと。私は生まれてからきっと何不自由なく暮らしてきたのだろう。住む家にも食べるご飯にも着る服にも困ったことはない。彼の言う平和とは、これらを全て失って安全でなくとも、心にただ一つの灯を残しつづけることである。ただ「生きる」という灯を。中村医師の命を守ることへの情熱はすさまじく、当初は「医師がどうやって用水路を作るのか」と疑問に思っていた人々も沢山の人々が協力し最終的に皆の力で作り上げたのだった。更に、私が感銘を受けたのは作業中の人々の表情だった。彼らは皆、笑顔だった。このことから言えるのは、中村医師が難民に与えたのは、治療や水ではなく、正に命を灯す希望であったのだ。彼は平和を望み、その手助けをする中で、人々に希望を与えつづけていた。彼は何者かの凶弾に倒れ、今はもうこの世にいない。しかし、今も尚あのアフガンの土地が多くの緑で茂っているのは、用水路によるものだけではなく、彼が守った灯と人々に与えた希望に応えようとする、アフガンの人々のレクイエムではないかと私は思うのだ。

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