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三井記念美術館で「伊達政宗になってみる」

2016/10/16

去る10月8日(土)に、土曜講座「そうだ!博物館へ行こう!!」が実施されました。今回は、中1~中3までの14名で日本橋の三井記念美術館を訪れました。開催中の特別展「松島瑞巌寺と伊達政宗」の鑑賞が目的です。本展は、東日本大震災復興祈念として、秘仏五大明王像が特別初公開となっています。33年に一度ご開帳される秘仏でもありますので、次のご開帳はだいぶ先です。とても貴重な機会でした。

今回の特別展ご案内

http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html

当日は朝9:30に東京駅に集合し、10:00の開館にあわせて訪れました。来館と同時に、研修室で簡単な講義です。教育普及担当の亀井先生より、特別展の概要と見どころをご紹介していただきました。あわせて、事前課題「伊達政宗のイメージ」を確認します。生徒達の書いたコメントは以下のようなもの(抜粋)でした。

「政宗を毒で殺そうとした母の面倒を死ぬまでみたというから優しいイメージ」
「天下統一の野望を持っていた人」
「小手森城の人間を皆殺しにしたというから残忍な面のある人」
「生まれるのがもう少し早かったら天下がとれたと言われているように優れた人」
「小田原攻めの際に、秀吉の元に白装束で行ったということから度胸のすわった人」

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良く書いてきてくれました。今までに見聞きした「伝記」や「物語」などで描かれるエピソードをもとに、政宗のイメージをまとめてくれたのでしょう。各イメージをまとめ、今回の展示を通じて、これらのイメージに加えて、新たな政宗のイメージを展示物を通じてつかむことが一つの目的であることを確認し、展示室へ。ここから自由鑑賞時間です。自由鑑賞中は、個人課題として政宗の人物像をあらわしている展示物を三つ選んでもらい、シートに書き込んでもらいました。一時間後、研修室へ再集合。各人が持ち帰ったシートには、さまざまな展示品とともに、それを選んだ理由が書き込まれていました。以下抜粋(ママ)。

・「道の記」
→料紙がとても華麗で、また字がきれいに書かれていて和歌に対する思いが良く伝わって良かった。伊達政宗の和歌の才能もうかがえて、文化人であったことがよく伝わってきた。

・「金製ブローチ」
→遺愛品の一つにヨーロッパ製ブローチがあったため、南蛮好みでおしゃれな人だと分かる。
→武将がブローチを愛用するところに興味をもった。実物はきれいで洒落ていた。彼は身だしなみをしっかりしていて、今でいうファッションにも興味があったのかもしれない。また、外国製のブローチなので、外国にも興味を持ち好んでいたのかも。

・「瑞巌寺本堂欄間額「松島方丈記」」
→この額は政宗の生涯にわたり、精神的・思想的拠り所となったとあるので、政宗の特別な思いがあったのかなと思った。

・「建盞 銘峴山」
→伊達政宗からは切っても切り離せないほど大切な茶の湯。伊達政宗がどれほど茶の湯を愛していたか分かる一品。

・「伊達政宗漢詩「八月十五日夜於松嶋」
→死ぬ少し前に詠んだ句なので、それでも美意識が句にあらわれていると感じたため。

・「黒羅紗地裾緋羅紗山形文様陣羽織」
→政宗の好みである南蛮の服で、政宗らしいと思った。政宗が南蛮を愛したことがよく分かった。
→黒、赤、金のシンプルな色づかいだが、とても大胆なデザインとなっていて、南蛮風の服になっているので、ヨーロッパに興味を示していたのがわかる。

・「徒然草抄」
→有名な『徒然草』を書写したもの。「花はさかりに・・・」の一節の書写である。政宗がこのように文化に興味があることをはじめて知った。


実際の展示物を通じて、新たな政宗のイメージをつかみとれたようでした。そしで、ここからが今回のメイン課題です。グループで「「伊達政宗の一日」を考えてみよう」という課題に取り組みました。各自が選んだ作品と事前に配布をしておいた伊達政宗に関する年表をもとに、子の刻から亥の刻までを記したタイムスケジュールをみなで話し合って作成し、そのスケジュールに今回の展示物や各自が書いたコメントシートをはりつけ、さらに、附箋でコメント等を書き込みます。

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各班が選択したのは、

・「1593年4月15日」(文禄の役で政宗が釜山に上陸して3日後)
・「1600年9月19日」(関ヶ原の戦いで石田三成が破られた直後。仙台での動き)
・「1604年4月のある一日」(江戸幕府成立後の仙台での生活)
・「1614年9月の政宗の一日」(大坂の陣)

時期はうまく分散しました。限られた時間でしたが、大変盛り上がりました。「何時に起きたんだろう?」「風呂は?」「夜の戦って?」「う~ん、それはあり得ないのでは?」いろいろな声が聞こえてきました。

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そして、最後に発表です。今回は、館側にご準備していただいた「政宗なりきりグッズ」?をお借りし、発表者は政宗スタイルで発表しました。恥ずかしそうな子ばかりでしたが、各班へのコメントを記入しながら発表を聞きました。

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最後に亀井先生よりコメントをいただきます。特に江戸時代になってからの政宗の一日について、伊達成実が晩年に残した「政宗記」をもとにしたスライドをもとに、ご紹介いただきました。

「一日三食じゃあないんだね」「風呂ではなくて行水かあ」「江戸時代だから政務・決済、仕事時間があるのか」などなど。また、間食の存在や食事のあり方、煙草など、生徒の関心を引く話が多くありました。

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生徒たちの模造紙を改めて見てみると、「歴史的事実」とは異なり、現代的な視点で書き込まれたスケジュールがあります。しかし、当時の時代の生活を考える良い機会になったと思います。鑑賞を通じて学んだ展示物を活用して、「政宗の一日」を考える課題は、展示物の内実にせまるきっかけになったと思います。今回の体験をもとに、美術館や博物館での「展示物」の見方が少しでも深まることを期待しています。

昨年度も三井記念美術館の皆様にはお世話になっておりますが、今回も事前の打ち合わせから、当日の準備まで多くの時間を割いていただきました。どうもありがとうございました。

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